中性脂肪の数値を解説! 数値の意味を知ることが対策の第一歩

監修者
プロフィール

記事 もくじ
年に一度、必ず健康診断を受けていても、その結果をしっかりチェックしていますか? 中性脂肪が高めという結果には、ちゃんと意味があります。「脂質異常症」など、中性脂肪の数値が関係する病気は多くあります。数値の意味を正しく知り、病気の早期発見・進行予防につなげるポイントを解説します。
1.中性脂肪の数値の意味と基準値とは?

中性脂肪の量は血液検査で調べることができます。その単位は「mg/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)」で表されます。例えば、健康診断の結果では、「50mg/dL」のように表されているはずです。この数字は、1dL(デシリットル)の血液中に、50mgの中性脂肪が含まれていることを意味しています。
中性脂肪の基準値(正常値)は、空腹時30~149mg/dLです。空腹時中性脂肪の値が150mg/dL以上、または非空腹時(随時)中性脂肪の値が175mg/dL以上の場合、「高トリグリセライド血症」と診断されます。検査結果では「TG」と略されることもあります。
ちなみに、「非空腹時(随時)中性脂肪値」とは、「食後の中性脂肪値」の基準です。空腹時の中性脂肪の値が低くても、食後の中性脂肪値が高い場合、動脈硬化のリスクが高まることが分かってきたため、2022年から診断項目に加えられました。
2.中性脂肪の数値が関係する「脂質異常症」とは

血液中の脂質は「血中脂質」と呼ばれ、代表的なものに「中性脂肪」「コレステロール」「リン脂質」「脂肪酸」の4種類があります。この中で、特に健康への影響が大きく、脂質異常症にかかわるのが、中性脂肪とコレステロール(LDLコレステロール・HDLコレステロール)です。
先ほど述べた通り、中性脂肪が診断基準値より高い状態を「高トリグリセライド血症」といいます。これに対して、LDL(悪玉)コレステロールが診断基準値より高い状態を「高LDLコレステロール血症」、HDL(善玉)コレステロールが診断基準値より低い場合を「低HDLコレステロール血症」と呼び、これら3つをまとめて「脂質異常症」と呼んでいます。
脂質異常症の3つのタイプ
➀高トリグリセライド血症…血液内に中性脂肪が多過ぎる状態。基準値を超える150mg/dL以上の中性脂肪が血中に流れると、血液はベトベト、ヌルヌルの状態に。
➁高LDLコレステロール血症…肝臓から血液中に運ばれるLDLコレステロールが多過ぎる状態。
➂低HDLコレステロール血症…血液中から肝臓に運ばれるHDLコレステロールが少な過ぎる状態。
3.中性脂肪の数値が高いと、コレステロールのバランスに悪影響

コレステロールは肝臓で合成され、血液に乗って各臓器に運ばれます。使われなかったコレステロールは再び肝臓に戻り、新しいコレステロールをつくる材料になります。コレステロールにはLDLコレステロール、HDLコレステロールの2種類があります。
LDLコレステロール
肝臓から血液中に運ばれるコレステロールのこと。酸化しやすく、コレステロールを全身の細胞に運ぶことから、動脈硬化の原因になりやすいとして、「悪玉コレステロール」と呼ばれることもあります。LDLコレステロールは多過ぎることが問題で、140mg/dL以上だと「高LDLコレステロール血症」と診断されます。
HDLコレステロール
HDLコレステロールは余ったコレステロールを回収して肝臓に戻す役割があります。そのため、「善玉コレステロール」とも呼ばれます。量が少な過ぎることが問題になり、40mg/dL未満だと「低HDLコレステロール血症」と診断されます。

中性脂肪はHDLを減らして超悪玉LDLを生み、動脈硬化を起こしやすくする

求め方は簡単です。LDLの数値をHDLの数値で割ると、LH比が算出できます。LH比が1.5までは正常。2.0以上になると動脈硬化のリスクが増え、2.5以上なら、既に血栓ができている可能性があります。

血液の中にたっぷりたまった中性脂肪は、HDLコレステロールを減らし、LDLコレステロールを小型化します。この小型化したLDLは「超悪玉コレステロール」と呼ばれるほど、非常に厄介なものなのです。
小型LDLコレステロールは酸化しやすく、サイズが非常に小さいため、傷ついた血管の壁に入り込みやすい特性があり、動脈硬化を引き起こすリスクを高めてしまいます。いわば、中性脂肪は動脈硬化の「黒幕」と言ってもよいでしょう。
4.中性脂肪の数値の意味を知って改善し、「動脈硬化」を防ごう

動脈硬化は、動脈の血管の壁がしなやかさを失い、硬くなった状態です。本来、血管は柔らかく、伸び縮みします。この柔軟性があるからこそ、血液はスムーズに流れ、酸素や栄養を体の隅々まで運搬することができるのです。
年齢と共に血管は硬くなっていきます。硬くもろくなった血管は傷つきやすく、傷ついた部分にコレステロールがたまって、血管の内腔が狭くなります。やがて血栓ができて血管が詰まるなど、大きな影響を及ぼします。血液中に中性脂肪がたくさんあると、動脈硬化はさらに進み、血液はますます流れにくくなります。
動脈硬化は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれています。その名の通り、軽度のうちは、自覚症状はほとんどありません。しかし、血流が悪い期間が長くなり、何も対処しないとやがて血管が詰まり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血といった、生命にかかわる重篤な病気を引き起こします。自覚症状がないからこそ、検診の結果は必ず確認し、改善していくことが大切です。
まとめ
動脈硬化は自覚症状のないまま進行していきます。動脈硬化を進行させないためには、中性脂肪の量を減らすことが大切です。数値の意味を知ることが、対策の第一歩になりますから、自分の体の状態を今一度、数値で確認することから始めてみましょう。